週末海外旅行のきっかけ


 なんで週末海外旅行?の続きです。


 旅を日常の延長上に置きたいが、サラリーマンとして仕事をしている限りそれは無理だというジレンマを抱えつつ、これは“しょうがないこと”なのだとあきらめながら、制限された時間とお金の中で私は旅を繰り返していました。その頃の旅は連休や比較的長期休暇が取りやすい時期を狙って、5〜8日程度の旅程で組むことが多かったのですが、その期間では10年前と同じ旅をすることはもちろん、旅に対しておなじ気持ちを抱くことも到底できません。しかも「しょうがない」とあきらめの境地で旅に出ているわけですから、旅の間は楽しいものの常にやりきれない気持ちを拭い去ることができなかったのです。


 数年前、私は転職をしました。もちろん、前の職場を去ってから新しい職場に移るまでの数週間は、思いっきり旅をしました。そして新しい職場で勤務を開始したのですが、今の職場も前の職場と同様忙しいものの、仕事自体は個人的な裁量で行えるようになったため、有給を取りやすくなったのがこれまでとの大きな違いでした。もちろん、長期間の休みを取ることは難しいのですが、1日程度なら比較的仕事のスケジュールの調整がしやすいので簡単に休むことができます。


 そしてある日、有給が好きな日に取れるのなら、金曜日に日本を出発して、月曜日に日本に帰るスケジュールで海外旅行をしてみようと突然思い立ったのです。それまで海外旅行と言えば、日本から遠く離れたヨーロッパやアメリカなどに行くことが多かったのですが、短期間での旅行ならせいぜい東南アジアだろうとあたりをつけ、一度行ったことのある場所ならなんとなく動きやすいだろうと、10年以上前に家族旅行で訪れたシンガポールまでの航空券を買いました。その航空券のスケジュールは、金曜の午後半休を取って、月曜を有給で休めば実現できるものでした。そして、シンガポール自体は一度訪れているので、それ以外の場所を回ろうと、シンガポールの東にあるボルネオ島を最終的な目的地としました。滞在先はブルネイ、そして東マレーシアのコタキナバルとクチンです。


 2泊3日プラス0.5日というスケジュールは、今までの旅からは考えられない短さでしたが、とても充実していました。その理由は、フライトスケジュールに沿った旅のプランニングをきちんとしていたからだと思います。これまでの旅行はなんとなく行き先を決めて旅先ではぽんやりと過ごして街歩きをするといった、日常生活の延長上にあるような旅が多かった。しかし、このときの旅行はシンガポールに到着してから再び出発するまで、移動先や宿泊先など、おおまかなスケジュールをきちんと決めてから旅に出たのです。この週末海外旅行を機に、私の旅に対する考え方は180度変わりました。

(〜次回に続く)


※現在発売中の「週刊ダイヤモンド」の特集は「エアライン&エアポート 世界大激戦」です。時価総額ランキングから空港の現地レポ、LCC(格安航空会社)の次の狙いなど、ビジネス視点から見た航空業界の今がわかっておもしろいです。私が一番優れていると思っているシンガポール・チャンギ国際空港の徹底した「顧客主義」の考え方などは読んでいて、私が実際にチャンギがなぜ優れているかと思っているところと合致している部分も。正直言って、日本の空港(特に新東京国際空港)はこのままだとそのうち廃れてしまいそうです。いっそのこと、どこかの外資系にでも買収された方がよいのかもしれません。